金沢の旅で買い求めた毛鉤。 目細八郎兵衛商店という創業400年の老舗の針・釣具店が作ったものだ。 金沢駅に近い、昔ながらの商店が立ち並ぶアーケード通りから一筋曲がった路地裏にその店はある。 横町の路地、木看板に「毛鉤」の文字。我々がアルミサッシのガラス戸を開けて入るとすぐ右横にカウンターがあり、袋に入った毛鉤がうず高く並べてあった。 カウンターの後ろに毛鉤を巻く作業机があり、土間から上がって壁際に1畳ほどの床の間がある。そこに毛鉤の材料や毛鉤をいれる箱がいくつも置いてある。 十坪あるかなしかの小さな店、左奥には今時の海釣用の赤いプラスチックの浮きなどの釣具も雑然と並べてあった。 どうやら七十歳代の爺さん二人でこの店をきりもりしているようだ。 毛鉤を選んでいると、カウンターの後ろで爺さんの一人が白熱灯のランプの下で黙々と毛鉤を巻いていた。何やら木版画に挑む棟方志功の趣き、姿も似ている。 「一日にどれくらい毛鉤を巻くのか?」訊ねてみたかったのだが、その棟方志功の老毛鉤職人の姿に気が引けてやめた。 鮎の毛鉤がほとんどだったが、なかにはバス釣用の派手な極彩色の大きな毛鉤もあった。もう一人の老人が店の店主で、毛鉤についてやこの店の由緒由来について話してくれた。 毛鉤のブローチやピアスらしきものがほかの毛鉤とともに壁にぞんざいに飾ってあった。近頃はバス釣用のこの派手な柄の毛鉤をファッションのアクセサリーとして使いたいという淑女やギャルのご要望でブローチなども手がけているとの話であった。 それにしてもあの老毛鉤職人はこの女性用のファッション・アクセサリーを作るときに抵抗はなかったのだろうか?白熱灯の下で相変わらず、 黙々と毛鉤を巻く仕事をしている棟方志功を見つめた。 ・・・・・・「けっ、女物の飾り物だって、このあっしに。ざけんなよーってんだ、釣りの世界に女物はねーよ、ってんだ。べらもーめー!!」・・・・・・ てなことを勝手に想像してしまい、いたたまらくなった。そして渓流釣り用の山女魚や天女魚の毛鉤を六つ買って早々にその店を立ち去った。 今にして。でもまてよ。魚を毛鉤で釣ることと、女を釣ること、魚や男の気を引くことや着飾ること。似通ったものがあるよな、同じようなもんだ。 ましてやヤマメやアマゴの漢字のなかに「女」という文字がある。 毛鉤職人の棟方志功もブローチを作りながらまんざらでもなかったのかもしれない。ひょっとして毛鉤とブローチは同じコンセプトでデザイン・つくれるものかもしれない、とふと思った。 ** 中之島中学の三瓶君と下中の渡辺君へ。近々下中にこの毛鉤お届けしますが、その前にインターネットセレクション、リクエストください。どの毛鉤がよいですか?? では、では。 象幸寺中学2年C組 こうせらむ
by koumurase
| 2005-03-13 21:59
| 魚
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